最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)323号 判決 1955年1月21日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人弁護士鍛治利一、同浅見隆平の上告理由は別紙記載のとおりであつて、論旨は要するに、本件土地は未墾地ではなく農地であると主張するに帰する。
しかし、本件土地について原判決の確定するところによれば、本件土地は、もと訴外飯塚久太郎所有の杉山であつたが、大正一二、三年頃同人は杉の伐採跡の伐根を除去し草を刈る等して開墾し全体に桐苗を植え一、二年間は豆粕などの肥料を施しまた毎年下草を刈り取る等の手入をしていたが、昭和二、三年頃上告人が桐苗とともに買い受け、専ら桐の木を育成するために数年間は石灰窒素等の肥料を施し、また時々土を掘起してやわらかくし下草を刈る等昭和一七、八年頃までは引き続き手入をし肥培管理をしたが、その後殆んど手入れをせず、昭和二二年頃から再び下草を刈る等時々手入をしたのであつて、現に目通り直径七寸乃至一尺二寸位高さ七、八間位の桐の木が約一二〇本、その全区域に亘り約三間の間隔に密生し本件買収計画当時その形態においても植林による山林と異らなかつたというのである。
山林を開墾し肥培管理した場合、いかなる程度に達すれば農地になつたものといえるかは、その限界を定めることの困難な問題ではあるが、前記原判決の認定事実によれば、ときどき肥培管理が行われた事実があつたからと言つて、本件土地は未だこれを農地とは認め難いものといわなければならない。それ故原判決は正当であつて論旨は理由がない。
よつて民訴四〇一条、九五条、八九条を適用し、裁判官全員一致の意見をもつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)